第11章 〜予兆〜
所変わって六番隊隊主室。
霊力は霊子吸収で戻したものの、熱が下がらない玲は、そこのソファでぐったりしていた。
「…隊長。四番隊連れてったほうが良いんじゃ…」
何時も元気な彼女が余りに静かなので、心配した恋次が白哉を見遣るも。
「術式の反動による高熱だ。回道など効かぬ」
黙々と書類を片付けていく白哉。
そのスピードが、何時もの倍から早いのは、気の所為ではない。
「っう〜…桃の手伝い、しなきゃいけないのに…」
常人ならば意識が混濁する程の熱を出しておいて、まだ仕事の心配をしている玲に白哉が呆れ混じりの視線を向ける。
「五番隊か。恋次、行って来い」
「えぇ?!俺、自分の仕事まだっスよ?!」
「それは私がする。早く行け」
「んな無茶な。大体、雛森が困ってるのは隊長にしか出来ない書類が有るからで…玲は知らねぇっスけど、俺ら副官が手伝えるもんじゃないんスけど…」
「それはこの私に行けという事か」
「いや、そういう意味じゃ…」
雲行きが怪しくなってきた会話に玲は苦笑して首を振る。
「いーよ。明日纏めてやる。どうせ明日は三番隊だろうから。吉良君ならそんなに仕事溜めてない…筈だし」
「一日で治るのか?」
「…前は治ったよ?」
何処までも楽観的な玲に白哉は溜息を吐く。
「総隊長との約束、本当に可能なのであろうな」
「うん、要は皆が霊圧で昏倒しなきゃいいんだもん。訓練が間に合わなきゃ、特殊防御装置創る」
成る程と頷く白哉と、何が何だか分からない恋次。
実は彼も本日昏倒させられた一人なのだ。
「何の話っスか?」
「…我等の霊圧軽減と、他全死神の耐久力の向上。そして、玲自身の斬魄刀の屈伏を一週間でやり遂げる事が今回の件を水に流す条件だ」
「…えっと、つまり?」
「少しは自分で考えるがいい」
「いや、あの…条件が出鱈目過ぎて何が何だか」
「仕事しろ」
「…うっス」
いつも以上に理不尽な自隊の隊長に、泣きそうになる恋次。
そんな中、玲はすやすやと眠っていた。
隊長羽織を布団代わりにして。
それを優しい眼差しで見つめる白哉。
その扱いの差に更に泣きそうになる恋次だった。