第11章 〜予兆〜
目を覚まして首を傾げた。
そこは昏い闇の中。
何も存在しない虚無な空間。
けれど、視界の端に七色に輝く命に溢れた場所が広がっていて。
そこが自分の精神世界なんだと自覚する。
天照と月読が、侵食し合う不安定な場所。
今は月読の力が膨張しているからだろう。
闇に覆われた空間の方が多い。
中央に、四色の鎖に身体を縛られてもがいている男が居る。
端麗な容姿は神が故か。
吐かれる暴言は、お世辞にも綺麗とは言えないけれど。
私は彼に近づいた。
紅玉の様な紅い瞳が、此方を睨みつけるも、気にしない。
「チッ来たのかよ。依代さんよぉ。てめぇなんざ呼んだ記憶はねぇんだがなぁ!」
「私が用があるのよ。それ、貴方だけじゃ解けないでしょうし」
「あぁ?!解くつもりなのか?折角俺の自由を奪えたのによぉ!」
「只で解いてなんてあげないわ。具象化なさい、月読。屈伏させてあげる」