第11章 〜予兆〜
「玲ちゃん、それ、嫉妬って言うんだよ?相手の事が好きだから、他の異性と仲良くして欲しくないの」
桃の言葉を聞いた途端、ずきんと頭が痛んだ。
軽い頭痛じゃなくて、頭蓋が割れそうなほどの強い痛み。
「っーぃた」
思わず頭を抱える。
「玲ちゃん?!」
痛みの所為か呼吸が上がって、力が抜ける。
まるで考える事を妨害する様に。
どんどん痛みが強くなる。
「は、…はぁ、っー」
「ごめん、ごめんね、玲ちゃん。余計な事言って。卯ノ花さん、呼んでくる!」
泣きそうな顔で謝罪してから、離れようとする彼女を引き留める。
これは回道でどうにかなるものじゃないから。
世界が、理解を拒絶して起こった痛みだから。
意味が無い。
ふっと薄れていく意識の中で、桃が泣いているのだけは分かった。
瞬間、どくりと脈が強く打つ。
月読が、目を覚ます。
私は必死に口を動かした。
「とーしろ、と、びゃくや、呼んで。急いでっ」
「え、うん、分かった!」
何が何だか分からないまま、桃は頷いて部屋を飛び出して行った。
霊力を可能な限り封印して、私は必死に意識を保つ。
けれど、天照が月読に飲まれて。
心を闇が支配して。
私は意識を失った。