第11章 〜予兆〜
そして、予定よりだいぶ早く帰って来た私は、五番隊隊主室でお茶を飲んでいた。
「桃、お茶淹れるの上手ね」
「本当?!ありがとう。これ、お茶菓子ね。朝日堂の新作焼き菓子なんだよ。食べよ」
そう言いつつ桃が持ってきたのはどう見てもクッキーで。
「ねぇ、朝日堂って何処の系列?」
「多分朽木隊長のかなぁ?どうしたの?」
「ううん、なんでもない」
白哉がこれを食べたのは修練場所でだけだったはず。
彼が味覚に敏感なのか、それともいつの間にか持って帰って試作させたのかは定かじゃないけれど。
何だか、流石だなぁと思ってしまう。
この分じゃ、尸魂界に洋菓子店が出来る日もそう遠くないのかもしれない。
なんて少し嬉しくなりつつ、クッキーを口に運ぶ。
「そう言えばこの味、玲ちゃんが修行の時出してくれたお菓子にそっくりだね」
「そうだね。こっちにもこんなのあったんだね」
くすくすと笑いながらお茶を楽しむ。
今更桃に鬼道を撃ち込むなどとうてい出来そうに無かったのでそれは早々に諦めた。