第11章 〜予兆〜
翌日。
桃の言う通り、五番隊での執務を手伝えと、地獄蝶での伝令を受け、私は其処へ向かっていた。
すれ違う死神達が皆慌てて頭を下げていく。
私に役職は無いのだけれど。
そう苦笑しながら、五番隊の隊主室へ入る。
「あ、玲ちゃん!どうかしたの?」
此方に気付いた桃が、不思議そうに首を傾げる。
「ううん、隊員さん達が皆頭下げるから、どうしてかなって」
「え!?だって玲ちゃん、総隊長より強いんでしょ?他の隊でも、皆そう言ってるし、皆知ってるよ?」
きょとんとした顔で、更に不思議そうに首を傾げられて、私は襲い来る頭痛を堪えた。
あの鬼事の日、あの場には私と総隊長しか居なかったはず。
なら、総隊長が自分で負けたと言ったのか。
そんな事を言い触らせる人じゃ無いかと思ってたのに。
「それでね、各隊の隊長…特に特訓に参加した隊長達が、隊員達に、絶対あの子には逆らうなって躾けてるらしいよ?」
成る程、彼奴らか。
「ごめん桃。用事出来た。お昼までに戻るから」
書類の量を見る限り、一日籠らなきゃいけない事はないと判断して、困惑気味に頷く彼女を置いて、私は瞬歩でそこを後にした。