第11章 〜予兆〜
「ん、あがったの?」
「お前な。幾ら何でも男の部屋でその格好はねぇだろ」
突っ込まれて、自分の姿に視線を移す。
うつ伏せで本を読んでいて、膝から下の死覇装は捲れ上がっている。
足袋は脱いでいるから素足で。
如何やら袴じゃない分、捲れやすいらしい。
けれど、下着が見えてる訳でも無いし、貞操観念と言うものは私の中にはちゃんと存在しないからか、よく分からない。
「んー…何がダメなの?」
問い返すと、呆れを孕んだ溜息が降ってきて。
「もう良いから、お前も入ってこい」
「うん?分かった」
首を傾げながらもさっき取ってきていた浴衣を手に浴室へ入る。
と言っても、白哉のお屋敷と違ってシャワーだけだけれど。
不満なんじゃ無い。
少し物足りなく感じるだけで。
髪を洗って洗髪剤を落とし、身体も洗うと、側にあった手拭いで水気を切る。
浴衣を着て緩めに帯を巻き、部屋へ戻ると、冬獅郎が私が読んでいた洋書を見て首を傾げていた。
「こんなもん、此処にあったか?」
「え?冬獅郎のじゃないの?」
「俺は料理に関するもんしか買ってねぇ」
「…紛れてたのかな」
その言葉で、彼は眉間の皺を深くする。
「自分の部屋に置いてるもんぐらい把握してる」
どうやら機嫌を損ねたようだ。