第11章 〜予兆〜
「…晩飯、部屋で作るか」
「そうだね」
抱いた不信感はすぐに消えるものではない。
毒を盛られたのが私だったから何もなかったけれど、もし冬獅郎だったら大事になっていたのだ。
そう思うと、彼等の判断は正しいのだろう。
ちゃっかり証拠まで取ってきていた冬獅郎には驚いたけれど。
近くの八百屋で野菜を買い、精肉店でお肉を買って。
私達は部屋へ戻った。
「何作るんだ?」
「ミネストローネ。冬獅郎は?」
「…それ、トマトスープだったか?なら、ローストビーフでも作るか」
彼の口から片仮名の料理名が出た事に一瞬固まって。
「もしかして、勉強したの?」
その問いに、彼は黙って本棚を指す。
其処には、フランス、イタリアンその他諸々の料理本が挟まっていて。
「流石。勤勉」
「解読に一日掛かったぞ」
「え?本場のを買って来たの?」
「取り寄せだけどな。現地の死神に送らせた」
「あら、流石天才?うん、現世の英語とかフランス語一日で解読出来るのは凄いね」
「お前も読めるだろ?」
「さぁ?後で見てみる」
そんな会話の後、二人で調理を始める。