第11章 〜予兆〜
一口食べてから、私は目を瞬かせて匙を止める。
冬獅郎の前の心太が入った器に手を翳して、天照の浄化の光を浴びせた。
「…玲」
「平気。私には効かないから」
もう既に内側にいる天照が解毒している。
毒自体も、殺意が篭ったようなものじゃ無い。
只、身体の何処かに異変をきたす程度の物。
それでも、飲食店で毒を盛られたとあっては瀞霊廷の沽券に関わる。
ふぅ、と溜息を吐いた冬獅郎が、視線でどうすると問うてくる。
「…取り敢えず、出よっか」
金額を計算して、机にお金を置いて、外に出る。
彼は支払いする事に目を丸くしていたが、黙って付いてきてくれた。
「良いのか?」
「うん、毒って言っても多分胃腸に異変が現れる程度の物だったし。見た限り、他に被害者も居なさそうだし」
「そう言う問題じゃねぇだろ」
「多分あの娘の独断。嫉妬、かな?」
「何でそんな冷静なんだよ」
普段より低い声に足を止める。
「冬獅郎も…えっと…」
言いかけた言葉は、飲み込まざる得なかった。
だって、霊圧が膨れ上がって、冷気が暴走して。
周りの人が恐怖と寒さに震えてるんだから。