第11章 〜予兆〜
翌日。
総隊長から直々に命を受けた玲は、九番隊の隊主室に山積みになっている書類を仕分けていた。
他隊の手伝いならば、前に約束した雛森の所が良いと不満を言ってはみたのだが。
先日まで現世任務で仕事が出来ず、且つ編集局も併設されている此処が一番大変なのだと言いくるめられては、仕方ない。
締切が近い瀞霊廷通信の統括で走り回っている檜佐木に変わって、執務整理を手伝っているのだった。
それにしても。
現世任務で出ていたからなんて理由でまかり通らない程溜まりに溜まった書類の山を見て、一つ溜息を吐く。
此処がこんななら、隊長不在の三番隊も五番隊もそこそこ大変なんだろうなぁなんて思いつつ。
黙々と急ぎの書類とそうで無い書類を仕分けていく。
どの道今日中に片付けるつもりではあるものの、やはり期限の過ぎている書類もあった為、午前中に回したほうが他も慌てないだろうと踏んで。
そうして、仕分けた急ぎの書類の山(最早エベレスト)を見上げ、再び溜息。
話し相手は居ないし、書類は部屋中に積み上げられているし、どんな拷問だと心の中で総隊長に毒突く。
そうしながらも、墨を擦り、筆を取って書類をぱらぱらと捲り目を通していく。
隊長印すら丸投げされた状況で、黙々と書類を仕上げていく。
至急の物は、辺りを走り回っている隊士を捕まえて持って行かせ、時折訪れる女性死神(何故か崇拝されている)にお茶を淹れてもらいながら。
昼になる頃、漸く急ぎの書類が全て片付いたものの、玲の機嫌は宜しくない。
これだけ仕事を溜めに溜め込んだ張本人が、一度も顔を出さないのだから無理も無いが。
朽木の屋敷で貰ったお弁当を広げていると、バタバタと此方に走ってくる霊圧を感じる。
が、不機嫌オーラ全開の、今にも針にでもなって襲いかかってきそうな重い霊圧はそのままだ。
勢いよく開いた扉と同時に、霊圧に充てられがくりと膝を付く黒髪の男。
顔に刺青が入った此処の部屋の主は、だらだらと冷や汗を流している。