第11章 〜予兆〜
「どうした?玲。その様な顔をするでない」
いつの間にか湯船に入ってきていた夜一が、すぐ側にいた。
「なんでも無いよ」
ふと最近癖になって来た笑みを浮かべてはぐらかすと、夜一が不服そうに眉を顰めた。
そのまま、何故か腰に手を回されて引き寄せられる。
「なんでも無い顔では無いがの。まぁ、儂が訊き出すにはちと共におる時間が足りぬか。それにしてもお主良い身体をしておるのぉ」
彼女の手が腰からお尻に滑って、思わず目を見開いた。
「ちょ、夜一?何して…やっ」
もう片方の手で胸を揉まれて、思わず声が漏れる。
「腰も足も細い癖に出るとこ出おってからに。で、誰かともうやったのか?」
「へ?何を…ひぅ」
「惚けるな。お主が先程種を残す手段だとか言いおった交わりよ」
「だから、私は「女の儂に触れられても反応しておるのにか?お主の身体はそうは思ってない様じゃがの」」
腰に手を回されたまま、やわやわと胸を揉みしだかれて。
だからと言って裸の女性相手に、攻撃らしい攻撃など出来るはずもなく。
「も、やめ…ルキア、助けてよう」
顔を赤くして呆然と此方を見つめるルキアに助けを求めると。
「夜一さん!何をして居るのですか!」
はっと我に返って叱責してくれる彼女。
だが、夜一はにやりと悪どい笑みを浮かべる。
「いや何、思ったより触り心地が良くてのぉ。ルキアもどうじゃ?柔らかいぞ?」
巻き込もうと誘う夜一と、それに若干の迷いを見せるルキアを見て。
私はさっと青くなった。
「玲、済まぬ」
あっさり裏切られた私は、夜一の拘束を振り解けず、外に助けを求めた。
流石に浴室に桜の刃が閃いた時は驚いたけれど。
それに気を取られて、夜一の力が緩んだ隙に浴室を飛び出した。