第11章 〜予兆〜
「浄界章の事でしょ?」
「話が早くて助かるのう」
そう言いつつも、再び溜息を吐いたのは、遣り難さからか。
「ならば、封印をしたのはお主で間違いないのじゃな」
「うん。全部封じた筈だけど…不備でもあった?」
「いや、無い。じゃからこうして此処まで来たのじゃが」
「そう。なら、封印式の事?」
「遣り難いのぉ、お主」
「あら、ごめんなさい」
思っても無い謝罪を口にすると、夜一はがしがしと頭を掻いた。
紫色の瞳が呆れの色を孕んでいて、苦笑する。
「儂で遊ぶなぞ、お主くらいのものじゃぞ」
「あは、案外乱され易いのね、夜一さん」
「今更さん付けなど要らぬわ」
「そう?なら夜一ね。私、名乗った方が良い?」
「良い。知っておる」
私達はどちらからともなく並んで歩き出す。
行き先はそのまま。
歩調はゆっくりと。