第10章 〜流転〜
その頃、流魂街のとある地下で。
目を覚ました古賀は、一つ呻いて呟いた。
「そうか。私は…生かされたのか」
あの後、結局戦ったが、どうやら加減されたらしい。
「お、起きたのか」
独り言のつもりだった言葉に、反応を示す声。
視線を向けると、橙の装束を着た色黒の女性と目が合った。
「あんたは…「四楓院夜一。京楽からお前を預かって欲しいと言われての。偶々茶渡達が見つけた創始者の所へ連れて来たのじゃ」
「創始者…?」
「バウントの生みの親、蘭島(ランタオ)。名を聞いたことぐらいはあるじゃろう」
蘭島と聞いて、余り良い印象を持たないのは、自分達種族がどんな扱いを受けているかを知りながら、助けてもくれなかった死神への怨念か。
そも、助けを求めて、それに縋ろうとしていた一族への侮蔑か。
しかし、その蘭島本人を見て、狩矢に殺された女のバウントとそっくりな彼女を、恨む気持ちは薄れてしまった。
「済まなかった。わたしは貴方達を…助けてやる事が出来なかった…」
その後、訥々と語る彼女の話を聞いて、理解した。
蘭島は一族を見捨てては居なかった。
人間に迫害を受ける一族を集め、コミュニティを作り、自分は瀞霊廷が一族を受け入れる様嘆願していた。
けれど、時の四十六室はそれを棄却し、蘭島に全ての責任を負わせ、瀞霊廷を追放したのだ。