第10章 〜流転〜
「玲、何をした?」
「長話になりそうだったから、情報を直接記憶に書き込んでみた」
「相変わらず予想のつかぬ事をする」
「冬獅郎が可哀想だったから」
そんな会話を余所に、強制的に色々理解させられた一護はと言うと。
書き込まれた情報を上手く飲み込めずに頭を抱えていた。
「これ、大丈夫なのか?」
流石に憐れみを感じた冬獅郎が玲に視線を向ける。
が、ばっと立ち上がった一護が玲に頭を下げる方が先だった。
「玲さん!俺も、鍛えてくれ!」
必死の形相で頼み込む一護には、成る程情報は伝わったらしい。
でなければそんな発想には至らない筈だから。
けれど、玲は目の前のオレンジの髪をくしゃくしゃと撫でた。
「貴方は、先に抑えなきゃいけないものがある筈。そしてそれは、私より向いてる人が居るよ。今あるものをちゃんと制御出来たら、鍛えてあげる」
「あんた、何処まで知ってるんだ」
顔を上げた一護が、呆然と玲を見る。
けれど彼女はくすりと笑って。
「教えたでしょう?私は世界に生み出された調停者で、貴方たちは世界の一部。知らない筈がないでしょ?」
至極当然の事の様に紡がれる言葉は信じ難い。
けれど、酷く神秘的な容貌の彼女が語ると、何故かすんなりと納得してしまって。
「…分かった。アレを抑えるのに、あんたより向いてる人、探せば良いんだな」
そんな人物が居るとは到底思えなかったけれど。
玲が嘘を吐くとも思えなかった一護は、頷く他無かったのだった。