第10章 〜流転〜
「…冬、獅郎…」
「日番谷隊長だと、何度言わせるつもりだ?」
「ハイ、ヒツガヤタイチョウ」
がくがくと手を上げて降参の意を示す代行に、冬獅郎は氷輪丸を鞘に収めた。
「なら、そのバウントを頼む。玲、行くぞ」
「あら、もう少し遊びたかったのに」
「お前な。一応、敵前だぞ?」
そんな会話をしながら、さらりと去ろうとしたのだが。
「その女は逃がさんぞ!」
バウントの霊圧が跳ね上がり、暴風が保管庫を破壊する。
「狩矢!てめぇの相手は俺だろうが!」
死神代行の斬魄刀から月牙天衝が放たれて。
その場はあっという間に戦場と化す。
私は黙って、他の場所にまで被害が及ばない様結界を張って、その場を離れた。
ふらつく足で如何にか銀髪の青年の背を追っていると。
ふと、彼が足を止めて、呆れたように溜息を吐いた。
「俺に無茶をするなと言ったのは誰だった?」
そう言えば、そんな事を言った気がする。
なんと返そうかと迷っていると、ふわりと身体を抱えられて。
「ならお前も、黙って無茶はするなよ」
思いの外優しい声音に、静かに頷いた。
熱でぼぅっとする頬に、冷たい手が添えられて。
心地よくて私の意識は落ちていった。