第10章 〜流転〜
「冬獅郎。眠い」
「ちょっと待てよ。もうすぐ…「狩矢!!」
「…来たな」
現れたのはオレンジ髪の死神代行と、黒髪眼鏡の几帳面そうな滅却師。
「あれ?あんた確か今朝白哉と一緒にいた…瑞稀玲…さん、だっけか。つか、冬獅郎?!お前なんかめっちゃデカくなってねぇか?!」
「日番谷隊長だ!」
「黒崎!そんな事を言ってる場合か!」
かっとブラウンの瞳を見開く代行にくすと笑う。
近くで覗き込まれた翡翠の瞳にふわりと笑みを零して。
「あの子、可愛いね」
なんて呟けば。
表情の消えた冬獅郎から冷気が立ち昇り、滅却師が言葉を失い、敵である筈の狩矢はくっと笑い、言われた本人は心外だとばかりに巨大な斬魄刀を此方に向けた。
「てめ、男に向かって可愛いはねぇだろ!可愛いは!つーかなんで冬獅郎とくっ付いてやがる?!付き合ってんのかてめぇらぁ!」
彼の付き合ってんのか、という言葉はいまいち理解出来なかったけれど。
私は冬獅郎の腕からするりと抜けだして、すとんと彼の前に降り立ち、顔を近付けた。
途端に蒸気が出るんじゃないかと思う程真っ赤に染まる顔。
「ほら、可愛いじゃない」
にっこりと微笑むと、僅かに頬を染めた滅却師が成る程、と頷き。
代行はずざざっと音がしそうな程のスピードで私から距離を取る。
「かかかか揶揄ってんじゃ、ねぇ!もし、そうじゃないとしてもだ!場所と状況をよーく考えろ!」
「うん、揶揄ったんだけど」
くすと笑うと、彼はがしがしと頭を掻きむしった。
「だー!俺はお前嫌いだ!」
「そう?残念」
悄然と落ち込んだ、ふりをしてみると。
「いや、嘘だ。嫌いじゃねぇ!寧ろ…「寧ろ、なんだ?」
慌てて私を慰めようとした死神代行は、首元に突き付けられた氷輪丸に冷や汗を流して言葉を止めた。