第1章 〜欠片〜
「…私は譲渡してるんじゃなくて、魂魄の保有霊力限界値まで引き上げてるだけ。
だから魂魄によって上がり方も全然違うけど、私は同調させてるだけだから、リスクは殆ど無いよ」
「同調…?」
「そう。大丈夫。目、閉じて?」
一瞬眉を寄せたけれど、素直に目を閉じた朽木さんに触れる。
霊圧が漏れないように結界を張り直してから、指先から霊力を流し込んだ。
彼の霊力に合わせて形を変えて、潜在能力値を探って少しづつ霊圧を引き上げる。
急に引っ張り上げると、冬獅郎みたいに意識を失ってしまうかもしれないから。
溢れ出した霊圧を朽木さんが抑え込むのを確認しながら、霊力を徐々に解放していく。
今溢れているのは元々彼が持っていた霊力で。
無意識に、必要とされずに封印されていたもので。
私が使う力はほんの少し。
唯、相手の意識に直接干渉するから本当は結構疲れる。
これは秘密だけど。
限界値ぎりぎりで手を離すと、彼の霊圧は、さっきの倍以上になっていた。
既に抑え込んでいて、それでも抑えきれない霊圧がだ。
私は前と同じ様に半減の抑制装置を作って彼の腕に嵌める。