第1章 〜欠片〜
そして、朽木さんに全て話した。
自分が世界の一部で、魂魄ですらない事。
必要な情報は記憶として勝手に上書きされていく事。
霊圧の事、斬魄刀の事。
途中、運ばれて来た食事を食べて、その味に感動したりしながら。
彼は終始黙って聞いてくれた。
時折相槌を打ちながら。
出来ない事は殆ど無いと言った時、少し彼の瞳が揺れたけれど。
結局彼は何も言わなかった。
「日番谷が成長していたのは…其方の力か」
「うん。口止め料って言って私が勝手にやったんだけど。魂魄安定させて、霊圧を潜在能力値まで引き上げたの。そしたら、体格も変わっちゃって」
「…そうか」
「朽木さんも口止め料いる?」
「…そんなもの無くとも言わぬと言ったであろう」
彼は揺らがない。
簡単に強くなれる、なんて甘い言葉にも。
「…じゃあ、お礼」
「…それは其方に負担は掛からぬのか」
「私に?」
「他者の霊圧を上げるのに、其方にリスクが無いとは思えぬが」
まさか私の心配をするなんて思わなくて、一瞬硬直した。
なんで、この人は。
こんなに優しいんだろう。