第10章 〜流転〜
「浄界章がっ!貴様、何をした!!」
白髪に赤目のその男は、紋章の消えた巨大な石を見て、私に殺気を向ける。
「何って…封印?」
その殺気と怒り狂った霊圧を、受け流せる程度にはまだ私は元気らしい。
何処と無く頭がぼうっとするのは…出来れば気のせいだと思いたい。
「封印、だと?!この超エネルギー体を此処まで封印したというのか?!何者だ貴様」
「さぁ、何者でしょうね」
飄々と返しては見るけれど、つと額から汗が流れて、足元がふらついた。
あの術の反動は身体への負担。
此ればかりは天照でも完全に回復させる事は出来ないらしい。
とは言え、彼女を宿す私でなければ、人の形を保っていられるかどうか、怪しいところだけれど。
「ふん。封印で力を使い果たしたか。ならば此処で殺してやる!」
「させねぇよ」
迫る風の刃が、氷の壁に阻まれた。
いつの間にか、嗅ぎ慣れた彼の香りに包まれて、安堵する。