第10章 〜流転〜
技術開発局の職員たちを上手く言葉で丸め込み、浄界章の本体が眠る部屋へ入った私は、石畳を破道で壊し、その姿を上から覗いた。
「あら、思ったより覚醒しちゃってる。霊力、保つかな」
ちらりと左腕の制御装置兼、演算装置に視線を向け、霊力抑制率をゼロにする。
そして、浄界章のエネルギーに負けない様霊圧を纏い、その巨大な石の上へと降り立った。
膨大なエネルギーを放つ石に手を置いて、同じ力をその場から探る。
霊力を放出し、全てを探索へ回すと、七十を軽く越える反応が返ってきて、息を吐いた。
憂鬱になっても仕方ない。
先に封印しておかないと、面倒事になるのは目に見えているのだから。
意識を集中させ、周囲の霊子と同調する。
「東の水竜、西の風虎、南の火鳥、北の土亀。刹那、我に隷属し力を貸し与えよ。”四神封印”」
鬼道でも回道でも無い、特殊な言霊を唱えると、身体から凄い勢いで霊力が抜けていく。
それと同じスピードで、浄界章が封印されて行くのを、意識の中で確認する。
最後の一つまで完全に力を抑え込んだ時、自身の創造した華奢な腕飾りが表示した残り霊力は12%だった。
完全にオリジナルの、しかも曲がりなりにも神を隷属させるこの術は、霊力の消費率が半端ではない。
その代わり、作業効率は良いし正確な上、普通にするよりもずっと強力。
浄界章の紋章が完全に消えた事を見届けて、私は上の保管庫へ戻った。
そこへ、破壊音。
突風が吹いて、その霊圧で、奴が来た事を察知する。
とはいえ、今の霊力での戦闘は出来れば避けたい。
タイミングが悪いと心の中で悪態を吐くも、風の刃は目の前に迫っていて。
私は集束させた霊子の刀でそれを弾いた。