第10章 〜流転〜
漸く乱菊が普段の調子に戻ってきた頃。
私はふと面倒事を思い出し、あ、と声を上げた。
折角行きたくも無い技術開発局に行ったのに、忘れていた。
バウントの紋章、浄界章のオリジナルが彼処の地下にあったのには気付いていたのに。
浄界章はかつて実験に使われたエネルギーを封じ込めた物。
バウントにしか扱えないが、そのバウントが瀞霊廷に浸入している今、あんな隠し方じゃすぐにばれる。
さっさと封印し直しておかないと、彼等のリーダー、狩矢はその力を使って碌でも無い事を仕出かすに決まってる。
その前に、誰かが倒してくれれば良いのだけれど。
そう上手く行かない事も何となく分かる。
だからこそ。
「急用思い出した。ちょっと行ってくるね」
「行き先は?」
「技術開発局」
酷く冷静な声音に行き先を告げ、瞬歩でその場へ駆けた。
残された冬獅郎は。
「松本」
「はい、何ですか?」
「報告、頼む」
「分かりました」
そんな会話の後、既に遥か遠くへと離れた玲の霊圧を追った。