第10章 〜流転〜
「おや、発見。七緒ちゃん、どうする?」
「どうって…いつものように花弁でも撒きますか?」
「いやいや、そうじゃ無くってさぁ…」
呑気に会話を繰り広げる八番隊の隊長の副官。
相対したバウントは、何故霊圧を消していたのに居場所がばれたのかと怪訝そうな顔をしながら、鉄球を取り出した。
「サイゲディッヒ、ダルク」
言霊で鉄球の形が変わり、蜘蛛の様なドールが現れる。
「あら、向こうやる気みたいだよ?」
「だからどうして私に話を振るのですか」
『貴方達余裕のつもりなの?なら、私と遊びましょう?』
鉄の前脚で斬りかかって来るドールを斬魄刀で受け止めた京楽は、やれやれと首を振る。
「ねぇ、バウントさん。お酒あるんだけどさ。ちょっと付き合わない?」
「なにを言っている」
「いやぁ?君、話せばわかる様な気がしてさぁ」
「敵と酒を飲むのが此処の風習か?その割には、仲間達の霊圧が次々に消えているのだが」
「僕は穏健派なんだよね。何のために此処に来たのか、ちょっと話しない?鉄球のドールがお酒飲めるのかは知らないけど」
ダルクと呼ばれたドールが主を伺っている。
バウントとて、この状況で飲みに誘われて、素直に頷く程警戒心は薄く無い。
ならばと京楽は刀を納めて、何処から取り出したのか敷物を地面に広げると、懐から酒を取り出してお猪口を投げた。
「ほら、飲もう!仲良く」
敷物の上にどっかり座って、戦闘するには程遠い雰囲気を放つ京楽に、バウントの古賀はすっかり呑まれてしまっていた。