第10章 〜流転〜
すっと麗人がその場に現れると、今までその場を渦巻いていた冷気が霧散した。
「冬獅郎、どうしたの?」
鈴のような声が隊主へ掛かると、氷雪系最強の斬魄刀が生み出す万年氷が砕けて粒子へと還って行った。
寒さに震えていた隊士達にとって、それは女神の降臨に等しかった。
「…何でもねぇよ」
ぶっきらぼうに目を背ける隊長からは、先程までの霊圧だけで人を殺せそうな雰囲気は感じない。
乱菊は泣きながら彼女に飛び付いた。
「…そう?」
自分よりずっと身長の高い乱菊の頭を撫でてあやす少女は気付いていない。
自身の齎す恐ろしいまでの影響力に。