第10章 〜流転〜
「わぁ…冬獅郎が荒れてる…」
遠くに出来上がった氷の剣山と、珍しく荒々しい彼の霊圧を感じ取り、私は首を傾げた。
「余所見してる暇があるのか?!リズ!」
『畏まりました!』
無数に分離し、恐ろしい速度で突っ込んでくる花のような、狐のような小さなドールを霊子の刀で全て叩き落として、地面を蹴る。
虚空を切ると放たれる衝撃波。
それを転がってぎりぎり交わすバウントに、予め霊力を収束させておいた手掌を向ける。
「破道の三十三、蒼火墜」
バウントを庇うようにドールが周りを取り巻いたが、それも何の障害にもならず。
集束力と転換率が振り切れた蒼炎は、着弾点から四方一里(半径約4㎞)を巻き込んで、全てを消滅させた。
因みに、近くに死神の霊圧が無いことは確認済みだ。
「…乱菊が可哀想だよね」
本音を言うと、何故あんなにも不機嫌なのか全く以って分からない為、首を突っ込みたくは無いのだが。
一番厄介な能力を持つバウントは今しがた倒してしまった訳で。
もうやる事も無いしと、冷気の渦巻く其処へ瞬歩で駆けたのだった。