第10章 〜流転〜
「待て!」
「何?更木さん」
「なんで俺のはねぇんだ?」
「え…渡しても、どうせ迷子になって意味無いかなぁと…」
更木のこめかみがピクリと震える。
この戦闘狂に面と向かってこんな事を言ってしまえるのは恐らく玲ぐらいのものだろう。
「んだと?!俺も毎回迷ってる訳じゃねぇぞ?!」
今にも斬魄刀を抜き放ちそうな剣幕に、玲が溜息を零して、懐を探る。
そして、他の隊長達に渡したセンサーと同じ物を取り出すと、虹色の光で複製し、少し手を加えて更木に投げた。
「それなら、一番近くに居るバウントの現在地を示してくれるよ。道案内付きで」
「てめ、馬鹿にしてんのか?!」
「無いよりはあった方が良いでしょ?迷ってる間に他の人に取られちゃったら怒るくせに」
余りに的を射たその言葉に、何も言えなくなる更木。
京楽の肩が震えていたのは、笑いを堪えているからだろう。
他の隊長格達は呆れていたが。
「じゃあね」
ひらりと手を振って出て行った玲を見送り、元柳斉は溜息を吐いた。
しかし、彼女のお陰で一番の懸念事項が払拭されたのも事実。
やれやれと首を振ると、結局玲を動かしてしまったことに隊長格皆が息を吐いた。
「まぁ良い。これで隠れ鬼は終いじゃ。速やかにバウントの殲滅に当たれ」
彼の指示で、隊長達が散ってゆく。
殲滅戦の幕開けだった。