第10章 〜流転〜
「バウントセンサー、作ったよね?実験体にしたくて此処に呼び込んだなら、彼等の特殊な霊圧を探知する物だって作らない筈ないよね?」
「な、何を…」
動揺を見せる涅に、くすと笑う。
「別に悪いようにはしないよ。それのデータ解析させてくれたら、すぐ帰るし」
「複製する気かネ」
「…今私、バウントの霊子データ持ってるんだけど」
そう告げると、涅がピクリと反応を示した。
「この私に、取引を迫るつもりかネ」
「違うよ?私が持つ霊子データを組み込んで、マユリさんが作った物だって各隊に配布してあげる。そうすれば、少なくとも悪いようには取られないでしょ?」
「そんな事をすれば私が実験体を手に入れられる確率が下がるではないかネ!」
「どうして私が、貴方の実験体回収に付き合わなきゃならないの」
霊圧に微かに殺気を混ぜると、涅が一歩下がった。
黒い化粧で覆われた顔は、しかし確かに恐怖に引きつっていて。
「早くしないと此処でしてる実験、時間回帰させちゃうよ?」
にっこりと笑顔で脅すと、涅は折れた。
「ネム。あれを持って来な」
「はい、マユリ様」
従順な副官が持ってきたそれは、掌に収まる程の小さな機械。
掴趾追雀を連想させる格子の模様と、数字が描かれていた。
私は其処にバウントから読み取った霊子データを読み込ませて、同じ物を幾つか創造する。
「はい、これもちゃんと動作する様になってるはずだよ。バウント全員の位置データが、ね」
涅は手に戻ってきたセンサーを見て、複雑な表情を浮かべていた。
「早くしないと、他の死神達に倒されちゃうよ?」
私のその言葉とほぼ同時に。
精霊壁をこじ開けられたとの警報が技術開発局に鳴り響いた。