第10章 〜流転〜
「…そうじゃの。現状では、異変の見られる地区に死神を急行させる事しか出来ん」
「彼等は死神が過去に犯した過ちの結晶。四十六室が存在を認めず隠蔽し、救いを求める彼等を裏切るように排他した、その末路がこの騒動。それを分かっている上で、尚、手を貸せと言うなら、構わないけれど」
暗に私には関係無いと告げ、眉根を寄せる元柳斎を尻目に、ぱくりと羊羹を口にする。
餡蜜も、人形焼も、団子も美味しいのだけれど。
やっぱり、口の中で蕩けるこの感覚が好き。
「…全く、口ばかり達者な小娘じゃの」
「え〜、お爺ちゃん卍解しても私無傷だったけど?」
くすりと嫌味を吐露すると、元々皺の多い顔が更に厳つく皺を寄せる。
「はいはい、分かったよ。バウントだってこの世界に無害なわけじゃ無いし」
ふぅっと溜息を零してお茶を飲むと、空になった湯飲みをテーブルに戻す。
「雀部さん、ありがとね。ちょっと出てくる」
「いえ、お気になさらず。何処へお出掛けで?」
不機嫌な部屋の主の代わりに、彼が問いかけてくる。
「十二番隊」
笑って出て行った玲を見送り、雀部は茶菓子を並べたテーブルを見た。
羊羹だけが綺麗になくなっていることに気付き、苦笑する。
「山本殿」
「…わかっておる。あれが彼奴なりの気遣いである事ぐらいの」
何もかも、頼ってしまっては死神達が堕落する。
今回の件も、あの少女のならばほん気まぐれで全て片付けてしまえる筈。
それをしないのは、他の死神達に功を立てさせる為なのだろう。
何とも言えない感覚に、元柳斎は再び溜息を吐いた。