第9章 〜修練〜
「ゲームでは勝った、けど何かなこの遣る瀬無さ」
結局擦り傷を負わせられたのも最初の千本桜と氷輪丸だけ。
しかも、玲は殆ど動いてすら居なくて。
「白哉と冬獅郎は他を気にし過ぎて力が出し切れてない。京楽はやる気なさすぎ。浮竹さん、自分の霊圧にもう少し慣れて。更木さんもうちょっと、頭使おうね。狛村は…うん。まぁいっか」
「言葉に困る程であったのか」
「えっと…忠誠心が強いなぁと」
結局卍解したきり、攻撃の一つも加えられなかった彼の頭をぽんぽんと撫でる。
しゅんと耳が下がっているのは、叱られたとでも思っているのか。
すっと天照を戻して、玲は地面に降りた。
「ちょっと疲れたから甘いもの食べよ」
振り返って微笑む彼女は、今まで戦っていたとは思えない程、呑気で。
しかし、美し過ぎて。
その眩しさに目を細めたのは、恐らく京楽だけでは無い。
「…烏滸がましい、のかも知れぬな」
あの少女を、捕らえたいと思う心すら。
その力も、清らかさも。
圧倒的過ぎて、近くに居るのに、届かない。
「玲」
呼ぶと振り返る彼女は確かに其処に居るのに。
酷く遠い、気がした。