第9章 〜修練〜
その後瞬時に離れた玲を追う様に、桜の刃が煌めく。
その圧倒的な奔流は、収束し爆散した風に散らされた。
「やれやれ。七緒ちゃん、捕捉できるかい?」
既に縛道の詠唱を終え、玲を捉えようと手を翳していた七緒が首を振る。
「…無理ですね」
速力があり過ぎる。
最初に風で弾いた以外は、全て瞬歩で避け続けている玲を鬼道で捉えられるはずも無い。
そのスピードはもしかしなくとも、かの死神代行の卍解時より速いのだから。
「日番谷」
「分かってる」
氷輪丸を抜いた冬獅郎が霊圧を上げた。
以前の様に恐怖を感じるほどでは無いが、圧で動きが鈍く感じる程に。
それに乗じて、他の隊長、副官達も霊圧を上げる。
そうしなければ、動けないからだ。
「卍解。大紅蓮氷輪丸」
冬獅郎の身体を氷の龍が覆う。
翼を型作り、尾を打ち鳴らして。
けれど、以前まであった氷の華は、その姿を消していた。
時間制限のあった彼の卍解は、魂魄補強の影響か、霊圧上昇の影響か。
完全な姿となっていた。