第9章 〜修練〜
けれど。彼の手に頭を抑えられ、綺麗な顔が近付いてきて。
目を閉じると、唇に熱。
何時ものように直ぐに離してくれるだろうと思っていたのに。
啄むように、角度を変えて何度も落とされる口付けに、身体が熱く熱を帯びた。
「っふ、と、しろ…んんっ」
息苦しくなって口を開くと、するりと滑り込んでくる熱い舌。
くちゅと耳朶に響く水音が卑猥なことくらい私にでもわかって。
舌を絡められ、口腔を蹂躙する様にしか動き回るそれに、段々と力が入らなくなって、彼の胸に倒れこむ。
「…う〜、馬鹿…」
「恐がらなくなったな?」
確かに恐くはなかったけれど。
それは前よりずっと彼が優しかったからで。
否、本当にそうなのか。
自分も彼に触れたいと思った。
どうしてかなんてわからない。
寂しかった反動なのか、それともまた別の感情なのか。
思考に沈むと、ずきりと頭が痛んで。
それ以上考えるなと言われている様で、息を吐いた。
「…冬獅郎とこうしてると安心する。けど、まだ…わからないよ」
またふわりと撫でられて、目を閉じそうになる。
けれど。
「あ、ご飯作らなきゃ」
ぱっと顔を上げた私に、彼は微苦笑して。
「手伝うか?」
「うん、ありがと」
今日は一緒に作ることにした。