第9章 〜修練〜
「私も様子は見ましたが、彼等の状態は通常の眠りとは訳が違います。無理に起こして日番谷隊長と朽木隊長に負荷が掛からないとも言い切れません」
「なら、ほっとくのか?壊れそうだぜ、あの女」
傍目から見れば、桃とやちるに指導しているようにも見えるのだが。
良く見ていれば、彼女の瞳が時折光を無くす。
虚空に視線を投げて、空虚さに耐えるように。
男性ならば抱き締めたい衝動に駆られ、女性ならば酷く胸を締め付けられる。
そんな瞳。
けれど、京楽や浮竹は玲に触れる事が出来ない。
撫でて安心させてやる事が出来ない。
交わされてしまうのだ。
何気無い言葉と、笑顔で。
更木にそんな気はさらさら無いし、狛村は意気消沈している。
桃ややちるが抱き付いても、それはじゃれ合いと変わらない。
何の変化も見られない。
その場の隊長達は揃って溜息を零す。
どうにも出来ない歯痒さを逃がすかの様に。
一人の少女が纏うその雰囲気は、その場にいる全ての死神達の心を重くしていた。