第9章 〜修練〜
しかしそれを予測してしまったが故に、彼女が何故眠らないのかが分からない。
仮に心が脆いのならば、自身でそれは理解出来るはずだ。
人は現実に耐え切れなくなると、眠る事で意識を逸らそうとする。
つまり、身体が疲れていなくとも、心が疲れていれば自ずから睡眠を取るはずなのだ。
「…詳しい事は分かりません。恐らく朽木隊長や日番谷隊長ならば何かご存知でしょうが…」
「いつ目を覚ますか分からない、か」
それを側で聞いていた京楽も、いつもの様に茶化さない。
桃とやちるが、懸命に玲に構ってはいるものの、会話の中で時折壊れそうな笑みを浮かべるだけ。
それは、何かに必死に耐えている様に見えた。
更木ですら、今の玲に斬りかかる事はしない。
何故か、受け止めもせずに倒れてしまう様な、儚さを感じさせるから。
「チッ…叩き起こすしかねぇだろ」
徐ろに席を立った更木に、卯ノ花が目を見開く。
「叩き起こすって…日番谷隊長と朽木隊長をですか?」
「他に誰が居るんだ。そもそも彼奴らが馬鹿な事した所為であの女があんな風になってるんだろうがよ」
確かに彼の言う通りなのだが。
未だ眠っている彼等は昏睡状態だ。
普段の様に声を掛ければ起きるような、そんな簡単な話では無い。