第9章 〜修練〜
頭上から降ってくるお湯を浴びながら、私はぼうっと虚空を見つめた。
だんだんと心が冷えていく感覚を確かに感じながら。
私はどうしてこんな事をしているんだろう。
彼等に力を与えて、操る術を教えて、どうしたいんだった?
自分が月読を抑え切れなくなった時、殺してでも止めて欲しかった。
敵として認識されてでも、破壊に身を任せるのは嫌だと思った。
なら、どうして嫌だと感じた?
彼等が余りに楽しそうで、優しくて。
傷付けたく無いと思ったから。
感情が、意思の邪魔をする。
私は調停者。
そこに善も悪も無い。
与えられた心は、創造と破壊を測るための只の天秤だったはず。
それがどうして邪魔をするの?
今の私は、破壊する事を恐れてる。
中立で無ければならないのに。
優しさに、触れすぎた?
もう、関わらないほうがいい?
そんな思考を、胸の痛みが抑え込む。
私は、どうしたい?
もう、分からない。
思考が滅茶苦茶に明滅する。
心が冷たくなって行く。
吐き気がして、呼吸が苦しくなって。
私は自分の身体を抱き締めた。
暖かいはずのお湯が、酷く冷たく感じた。