第9章 〜修練〜
一日経って。
後から始めた桃、やちる、狛村も鬼道練習に疲れを見せ始め、更木が漸く制御出来た頃。
間に細かく休憩を挟みながらコントロール修行をしていた京楽や卯ノ花が、全く休みなく鬼道を打ち続ける冬獅郎と白哉に怪訝な視線を向けていた。
「彼等は霊力が無限なのかい?」
そう思うのも無理はない。
けれど、玲の目から見れば、霊子変換による霊力回復と鬼道による消費を常に繰り返している彼等の体力は限界のはずだった。
まだ立って鬼道を打っていられるのは彼等の意地だろう。
回復が消費に追い付いている以上、霊力が枯渇する事は無いが、身体への負荷は通常の消耗とは段違い。
現に彼等の瞳が、何処か人形の様に濁っていて。
仕方なさそうに息を吐いた玲は、すっと彼等に歩み寄った。
「冬獅郎。白哉。もう良いから、一度寝て来なさい」
何時もより大きめの声で言葉を投げると、詠唱が止まり、瞳が玲を捕らえると、少し揺らいで、それから二人して崩れ落ちた。
当然だろう。
約二日、休みもせずに霊力を回復し、消費し続ければ誰だって気絶する。
張り詰めていた糸が切れたかの様に、眠っている二人を玲は呆れの眼差しで見遣った。
テーブルから見ていた卯ノ花と京楽はきょとんと目を瞬かせた。
「えぇ?どうしたんだい?」
「玲さん、お二人は大丈夫なのですか?」
状況が理解できていない卯ノ花と京楽にふと笑みを浮かべて。
「取り敢えず、寝かせてくるね」
自身の霊力を身体に纏って、身体能力を強化した玲は、二人を休憩室に運び込んだ。
部屋が別だと様子を見難い為、自分の部屋にベッドを二つ創り出して、そこに寝かせる。
天照の力を借りて、緊張を解し、体力を少し回復させると、苦しげだった表情が幾分か柔らかくなる。
けれど、丸一日は起きる事は無いだろうと判断して、玲は部屋を出た。