第1章 〜欠片〜
「…悪いな。客に茶まで淹れさせて」
「いいよ。全部分かるから、困らないしね」
今更のように気を遣う冬獅郎に苦笑して、お茶を飲む。
温度も完璧。
うん、情報源がフルオートなのはやっぱり便利だね。
ちょっと普通じゃないって自覚させられて好きじゃないけど。
「しかし、その情報源は誤魔化せよ。執務も俺が教えたって事にしとけ」
「…やっぱり?」
三色団子を齧りながら冬獅郎に視線を向ける。
「隊長格は兎も角、他の奴らには知られねぇ方が良いだろうな」
同じ様に団子を手に取りながら、複雑な表情を見せる彼。
心配してくれているのだろう。
なんだか、心が暖かくなる。
「調停者とかって言うのも隠すなら、斬魄刀…どうしようかな。私の刀、どう頑張っても普通に見えないから」
初めて口にする食べ物に心の中で感動しながら、首を捻る。
すると、翡翠色の瞳が真っ直ぐ此方を向く。
「お前の斬魄刀の能力ってなんなんだ?」
そういえば、後でって言ったっけなんて思い出す。
さり気無く防音効果のある結界を張って。
「…創造と破壊かな」
しれっと答えると、冬獅郎はぴしりと固まった。
「つまり?」
言葉だけで途方も無い能力だと言うことは分かったらしい。
けれど、どの程度の能力なのかなんて想像もつかないのかもしれない。