第1章 〜欠片〜
霊圧で其れが誰なのかを察知してしまった冬獅郎は、また溜息を吐いた。
「あ、私が持ってた薬飲んだら大きくなったとか言っとく?」
「…霊圧は隠せてるからな。それしかねぇか」
頷き合った私と冬獅郎は、瞬歩で移動した。
私は長椅子。
冬獅郎は執務机に。
それと同時に執務室の扉が開く。
「すみません、隊長!寝坊しまし…た…って隊長?!!」
駆け込んできた凄く綺麗な女の人が、冬獅郎を見るなり目を見開いた。
「…てめぇ、松本。今寝坊したって言ったか?」
冬獅郎のこめかみがぴくぴくしてる。
けど、橙髪の美女は華麗にスルー。
「ええ?!どうして?!銀髪と翡翠の瞳、確かに隊長なんだけど、大きくなって…ますよね?」
「うるせぇよ。ちょっと色々あったんだ。それより…「きゃああああ!超絶美青年!また隊長のファンが増える!私、用事思い出したので、ちょっと失礼します!!」
「あ、待て!松本!!」
冬獅郎の制止の声は届かず、松本と呼ばれたお姉さんはあっという間に瞬歩で消えた。
「えっと…説明、要らなかったね」
「…あの野郎…!」
俯いて肩を震わせている彼の怒気が凄まじかったので、とりあえずお茶でも淹れようと立ち上がる。
部屋に入ってきたと同時に流れ込んできた情報を基に、隣部屋にある台所でお茶を淹れて茶菓子も盆に乗せる。
「冬獅郎。甘いもの食べよ」
丁度あったお団子を指して、笑みを見せると、盛大に溜息を吐いた彼はどうにか怒りを納めて、正面の長椅子に移動した。