第1章 〜欠片〜
「そんなことないよ?もし、冬獅郎が全部皆にばらして、私がやったって言っちゃえば、隠す必要無いでしょ?」
「…んなことしたら、お前他の死神共に追い回されるぞ」
それは極普通の反応で。
手っ取り早く強くなれる方法があるなんて知ったら、喰いつかない訳がない。
今の彼の霊圧の上がり方を見るに、誰だって努力してるのが馬鹿らしくなるだろう。
「そうなったら恨むね」
笑顔で告げると、冬獅郎は呆れたように目を閉じる。
「…結局選択肢ねぇじゃねぇか」
「そうかな?」
「…言霊一言も発さずに六十番台の縛道使えるような奴を誰が好き好んで敵に回すんだ」
どうやら軽く根に持ってるらしい。
そう言えば隊長格の人達でも番号と術名は言うんだっけ。
「あは。今度から気をつける」
「そういう意味じゃねぇ」
なんか冬獅郎、溜息ばっかり吐いてる。
これからの展開が予想できて憂鬱なのかな。
そういえば、結界解いてなかった。
思い出して、ぱちんと指を鳴らすと、紗蘭と結界が消える。
「…あぁ、そりゃそうだな」
消えた結界の方へ視線を投げて、当然かと頷いてる冬獅郎。
其処へ、バタバタと近付いてくる足音が一つ。