第6章 〜朧夜〜
「其方は、住み良いか?」
—尸魂界から消えた魂魄は、形を持たず彷徨い、やがて転生の輪廻に組み込まれます。私も…もう。
「生まれ変わるのか」
—はい。しかし、転生してしまえば、私は白哉様に頂いた幸せだった時を忘れてしまうことでしょう。それが、恐ろしゅうございました。けれど…もう、心残りは御座いません。
姿は見えないが、緋真が優しく笑った気がした。
「緋真。私は…其方との約束を」
—白哉様は、妹を守ってくださいました。私は幸せ者で御座います。
「しかし…!」
—白哉様。今まで…有難う御座いました。
ふわりと、暖かい風が私を包み、抜けていった。
それと共に、薄っすらと感じていた緋真の気配も、消えていた。
「緋真…」
暫し呆然としていると、玲が布団の中で身動ぎした。
そうか、あの斬魄刀は…私の迷いを知った上で、緋真の声を届けたのか。
緋真が、もうすぐ転生し生まれ変わる事さえ知っていて、今この時に。
創造神の現し身か。
確かにそうやも知れぬ。
否。
此れが神で無いのなら、私は幻術にでも掛けられたのだろう。
もしそうだとしても。
私は此奴の刀を責める事など出来はしないだろうが。