第5章 〜遊戯〜
「どうしましょう、隊長」
「恐らく延命処置の類のものでしょう。このゲームが終わった後に纏めて治すしか無さそうですね」
やれやれと息を吐く卯ノ花に、へらりと笑った京楽が言葉を発する。
「ん〜多分違うと思うよ?」
「何か分かるのですか」
「あの子は全力で戦って良いと言った。終わったら全部元に戻すともね。それって僕等が負ったこの傷に対しても同じ事をするつもりなんじゃ無いかい?」
「では…瀞霊廷の破損だけで無く、損害全てに対して責を負うと?そんな事、一人の死神に出来るわけが…」
言い掛けて、卯ノ花は口を噤む。
本当に彼女が只の死神であったなら。
鼻で笑い飛ばされる程の傲慢さだ。
一人の死神が、戦いの全ての責任など取れるはずも無い。
けれど。
彼女は世界が産み出したカケラで。
本来魂魄が持つ成長限界や常識に縛られない存在で。
ならば、可能なのでは無いかと、思ってしまう。
同時にそんな存在を、死神として縛り付けようとしていた自分達の傲慢さに眩暈がして、ふらと卯ノ花は後ずさる。
それを勇音が慌てて支えた。
「まぁ、心配しなくたって彼女は怒ってないよ。寧ろ楽しそうだったよ?」
「…そう、ですか」
卯ノ花は、経緯はどうあれ、彼女の喧嘩を買ってしまった元流斎を密かに恨みながら。
窓から見える空へと遠い視線を向けた。