第5章 〜遊戯〜
「あら、貴方は判るの?」
狛村と対峙した玲が、不思議そうに首を傾げる。
「貴公からは日番谷や朽木の臭いがせん」
「あら、流石に鼻が良いのね」
「愚弄するか」
「違うよ。ねぇ隊長。良いものあげるからこっちおいでよ」
妖しく笑って、玲が手にしたのは骨つき肉。
ぴくりと反応した狛村にくすと笑って、瞬歩で消える性格の悪い創造体。
暫く悩んだ狛村だったが、小さく獣耳を下げて肉の匂いを追った。
玲はそれを見送り、溜息を吐く。
後でお詫びしなきゃなぁ、なんて思いながら、吉良と雛森に向き直ると。
「狛村隊長…」
「まさかあんな…」
さっきの光景に相当な精神ダメージを食らっている副隊長二人。
「…思考は同期させたんだけど…なんかあの子性格悪いみたい」
一応フォローする玲だが、確かに人狼の姿をした隊長が、肉につられて消えたとなると、無理も無いのかもしれない。
戦意を喪失している二人を玲は白伏で気絶させ、雛森だけは安全な場所に運んでおいた。
「私まだ何にもして無いなぁ…」
暴れる創造体達の霊圧を感じながら、玲はぽつりと呟いた。