第5章 〜遊戯〜
「更木…か。あの戦闘狂は」
ぽつ、と呟かれた暴言は、更木に対してか、それにわざわざ当たりに行った他の創造体に対してか。
刻限は、開始からそろそろ一刻と言った所。
駆けていた玲は、行く先の屋根に派手な羽織が翻るのを見て、方向転換した。
「あれぇ、逃げるのかい?」
「花天狂骨の相手をする程暇じゃ無いの」
「えぇ、そう言わずにさぁ。どうせゲームなんだからこっちの遊びにも付き合ってよ」
心底残念そうに追ってくるこの男の斬魄刀の能力は面倒だ。
ある程度情報はあっても、どんな遊びに付き合わされるか予測が付かない。
そう判断した玲は、速度を上げて引き離しに掛かる。
が、不意に前方にもう一つ気配を感じて、足を止めた。
「あら、読まれちゃったね」
「伊勢七緒ね。その程度の縛道で縛れるとでも?」
すっと其方へ指を向けると、彼女が放とうとしていた縛道が弾けて悲鳴が上がる。
京楽は、その余波で吹き飛ばされた七緒を見て玲を見据えた。
「おや、やっぱり僕に付き合って貰おうかな」
「貴方の斬魄刀は解号が長かったっけ」
「あはは、やだなぁ。そんな事まで知ってるのかい」
何処と無く空笑と取れる笑い方に、玲は少し考える。
「貴方の遊び、指定は出来るの?」
「流石にそこまでは知らないみたいで安心したよ」
動揺を隠した京楽に、玲は確信に似た言葉をぶつける。
「出来るのね。なら、付き合ってあげる」
「ご所望のゲームは?」
「艶鬼」