第5章 〜遊戯〜
「ちっ…また行き止まりか」
玲を捜し回って駆けていた更木はもう何度目かも分からない行き止まりに突き当たっていた。
「剣ちゃん、方向音痴〜!」
それすら楽しそうに、肩で声を上げるやちるを見て、面倒くせぇと斬魄刀を抜く。
「そういや、彼奴言ってたなぁ。今日は本気で暴れても構わねぇってよ!」
そんな叫びと共に、目の前の壁を斬り倒した更木の目の前に、すとんと一つ影が落ちる。
「言ったけど、無闇矢鱈破壊するのは止めてくれる?」
普段の玲の声より半音低い声音。
しかし、普段から聞き慣れていない二人には、玲にしか見えない姿形。
「ほう、暴れてみるもんだな。そっちから来てくれるとはよ」
「後で直すの、大変だから」
すと目を細める彼女の霊圧が上がり、更木はにやりと口を吊り上げる。
「やちる、離れてろ」
「はぁい!」
元気よく肩から飛び降り、避難するやちるを見送って、玲はふと息を吐いた。
「時間かけるつもりは無いよ?」
「そうか。なら最初から全力で行ってやる」
更木は躊躇いもせずに、眼帯に手を掛けた。
霊圧を読むことが苦手な彼も、気付いたのかもしれない。
今目の前に居る玲は、気配を殺した化け物と大差無いと。
ずんと、大気が震える程に上がった更木の霊圧が、風を巻き上げて襲いかかる。
しかし、その中ですら、顔色一つ変えない玲は、静かに手を差し出した。