第5章 〜遊戯〜
同刻、北東三十五地点。
「あら、砕蜂やられちゃった」
他人事の様に呟く玲に、なんだと?!と食い付く死神が一人。
顔に69の刺青が刻まれた、既に傷だらけの男は檜佐木修兵。
「ね、しつこい男は嫌われるよ?」
そこそこ反撃しながらもちゃんと鬼事に従事していたその玲は、不意にぴたと足を止めた。
「いや、待てコラ。人聞きの悪い言い方すんじゃねぇよ」
解放状態の斬魄刀、風死を持ったまま突っ込みをいれる修兵。
どうやら目の前の玲に違和感は感じているらしく、彼の瞳に情の色は無い。
「あらそう?てっきり貴方本体が好きで見た目同じの私を追いかけてるのかと…」
また、本物の玲なら絶対に口にしない言葉を零す創造体。
思考が同期していても、性格が同じとは限らない…のは、玲も今回初めて知った。
「ちげぇよ?!何変な被害妄想してやがる!お前が始めたゲームだろうが?!」
全力で否定する彼の頬は少し朱くなっていて、説得力は欠片も無いが。
「ふぅん。まぁどっちでも良いんだけど…そろそろ次の鬼が来るから、貴方退場ね?」
自由奔放な彼女の台詞にがくりと肩を落とす檜佐木。
馬鹿らしくなったらしい。
「そうかぃ…じゃあ本気でやってやるよ!」
霊圧を跳ね上げて、鎖鎌を投げる彼に、呆れた様に視線を送って。
「塞」
縛道の一で、がちりと後ろに腕を組まされた檜佐木は、暫しショックで固まった。
「じゃあね」
「は?!ちょ、待て!やる気無さすぎだろ?!おい!!」
詠唱破棄の上に一桁台の縛道に簡単に縛られている自分の非力さに半泣きになりながら。
彼の叫びは少し捻くれた玲の耳には届かなかった。