第5章 〜遊戯〜
つまらない。
破道一撃でぼろぼろになった班目と綾瀬川からつっと目を逸らして、そんな事を思う。
まともに受けて出血の多い斑目を、魂魄剥離防止結界が保護するのを見届けて。
玲はくるりと踵を返した。
「逃げるのかい…!」
まだ意識があった綾瀬川の言葉に視線だけを向けて。
「その傷で何が出来るの」
そう冷たく返せば、彼は血を吐きながら立ち上がって、斬魄刀を構え直した。
「僕の斬魄刀の本当の名前…」
「知ってる」
「…!そうかい、なら、君は誰にも言わないね…!裂き狂え、瑠璃色孔雀!」
解放された斬魄刀から伸びる蔦を、玲は無言で発した赤火砲で焼き払う。
加減したそれは、蔦だけを滅し、綾瀬川には傷を付けない。
「っく…瑠璃色孔雀!」
再度叫ぶ声に斬魄刀が呼応するも、玲の目には彼の残り霊力が見えていた。
「貴方の斬魄刀は、確かに形勢逆転をさせ得る力がある。けれど、使う状況を誤れば、霊力の大量消費で自分の首を絞めるだけ。覚えておくと良いかもね」
霊力の枯渇でがくりと膝を付く綾瀬川に言い置いて、今度こそ玲はその場から離れた。