第4章 〜華奢〜
どれ位、そうしていただろうか。
漸く落ち着いて、顔をあげた私は、そこでやっと違和感に気付いた。
「…そういえば、恋次は?」
側にいる白哉に問うと、彼は机の上から書類を一枚取り上げた。
「早朝、現世へ任務に降りた」
「…そうなんだ」
道理で隊舎が静かなわけだと納得する。
そこへ、ぱたぱたと駆けてくる一つの足音。
「た、隊長!大変です!」
「…入れ」
執務机に座った白哉が冷たい声を投げると。
扉が開き、顔を蒼白に染めた隊員が、慌てて頭を下げて口早に告げた。
「十一番隊の、更木隊長が…!瑞稀玲を出せと…!」
「追い返せ」
「しかし…既に隊士はほぼ全滅で…!」
まぁ、無理も無い。
そう、白哉も分かっているはずなのだけれど。
溢れる溜息はどうにもならなかった様だ。
「いいよ、白哉。私行ってくる」
「其方が行く必要は無い」
「用があるのは私みたいだし。それに、隊員さん達も治してあげなきゃ仕事にならないでしょ?」
私の言葉に、白哉は少しだけ迷う素振りを見せた。
多分、扉の前で縮こまっている隊員には分からない。
けれど、私なら気付くレベルで。