第4章 〜華奢〜
「…人に拒絶されるのが怖いか」
見透かすような漆黒の瞳に、私の弱さを暴かれる。
吸い込まれる様な真っ直ぐな瞳に、もう嘘など付けなくて。
小さく頷いて肯定を示した。
どうしてこんなに恐ろしいのか分からない。
けれどもし、この人に彼と同じ事を言われたら。
私はまた、自分自身が消えてしまうかのような、あの途方もない不安に襲われるのだろう。
私は意志の力で形を成したけれど。
そこに存在する事を認めてくれるのは彼等だけで。
私が人と同じ、心を持っている事を理解してくれるのは彼等だけで。
もしこの人達の中から、私という存在が消えてしまえば。
多分私は…
「もう良い。何も考えるな」
白哉にそっと抱き締められて、漸く私は自分の呼吸が酷く乱れている事に気付いた。
優しく髪を梳かれて、息の仕方を思い出す。
「すまぬ。其方を追い詰めるつもりは無かった」
彼の言葉に悪気が無いことぐらい分かってる。
けれど私の心は、私が思っていたよりずっと脆いらしい。
「ごめん、なさい」
「何故謝る?玲。其方は悪くないだろう」
彼の羽織をきゅっと握って、胸に顔を埋めた。
一瞬、私の中で天照の光が弱まって、月読が身動ぎしたのを感じ取ってしまって。
背に悪寒が走って、しがみ付かずには居られなかった。
白哉は何もそれ以上言わずに、私の背を撫で続けてくれた。