第4章 〜華奢〜
「昨夜はあの後どうなった?」
その言葉に私は硬直した。
昨日、冬獅郎の部屋での出来事は、きっちり覚えてはいるものの、流石に人に言える様なものではなくて。
突き放されそうになって自棄を起こした自分の言動も、彼の行動も。
恐らく知れれば大変な事になる気がして。
「…あんまり、覚えてないよ」
私は恐らく初めて、この人に嘘をついた。
それは多分、身体が触れ合っている彼には意味の無いもので。
「…言えぬ事があったのか」
少し固くなった声に、つきりと胸が痛んだ。
「…私が我儘言って、冬獅郎が怒って。でも一人になりたくなくて…」
手がすっと外されて、視界が戻る。
見上げた彼はこれ以上無い位、険しい顔をしていた。
「何故私の所へ来なかった?」
「…白哉、先帰っちゃったから…何か用事でもあったのかと思って…」
本当は違う。
ただ寂しいだけなら、私はすぐにこの人の所へ行っていたはず。
怖かったんだ。
冬獅郎に突き放されるのが。
拒絶されるのが、酷く恐ろしくて。
じゃなきゃ、自分の恐怖を我慢してまで、側に居ようだなんて思うはずない。