第4章 〜華奢〜
日の光で意識が浮上して、けれど酷く安堵する香りにまた微睡みに引き戻される。
目の前の浴衣を無意識に掴むと、小さな溜息が落ちてきて。
「玲、起きろよ」
耳許で囁かれる声が擽ったくて首を竦めると、かりっと耳を齧られて、背に走った衝撃に跳ね起きた。
「っー冬獅郎!」
ばっと噛まれた耳を抑えて彼を睨むと
「耳、弱過ぎだろ」
くっと意地悪な笑みを浮かべて、からかって来る銀髪の青年。
一緒にベッドに入ると、結局いつもの様に抱き締めてくれた彼は酷いことは何もしなくて。
けれど、どことなく吹っ切れた様に見えるのは気のせいなんだろうか。
「不意打ちなんて卑怯だよっ」
尚も可笑しそうに手で口許を隠す冬獅郎をきっと睨むと。
「ふぅん…なら、不意打ちじゃなきゃ良いのか?」
そう言って笑みを深くする彼に、軽く脳が警鐘を鳴らして。
ベッドから飛び降りると、追っては来ない所を見ると、揶揄われただけの様だった。
むっとしながら浴衣を軽く整えて、キッチンに立つと
「良いから座ってろ」
後から来た冬獅郎に追い払われて。
淹れてくれた紅茶と呼ばれるお茶に口を付けて、程よい渋みと癖になる清涼さに、綺麗な色のそれを見つめる。