第4章 〜華奢〜
絶対朱いだろう顔を手で覆う様に隠すと、
「…とーしろ、きらい?」
泣きそうな目で此奴が訴えるのは不安で。
「…んな訳ねぇだろ」
嫌いになれれば、どれだけ楽か。
そんな風に思う自分がいる。
慣れない感情に振り回されて、自分が嫌になったのも一度や二度じゃない。
たった数日しか一緒に過ごしていないお前に、心の大半を占拠されていて。
それでも壊したくなるような衝動は、どうにか抑えていたつもりだったのに。
「…眠いよぅ…」
擦り寄ってくる此奴が無意識に発する色香に、あてられそうになって、目を閉じて深く呼吸した。
「…浮竹。後頼んでいいか?」
漸く落ち着いてきた浮竹に問うと、こくこくと頷きが帰ってきた。
鮮烈なまでに男を狂わせる隣の此奴を視界に入れない様にしているのが、すぐに分かった。
「…なら頼む。此奴送って俺も帰る」
机に金子を幾らか置いて、しがみつく玲をひょいと抱き上げる。
「…歩ける、よ?」
腕の中で扇情的に首を傾げる玲から無理矢理視線を外して。
「吉良。変な噂流すなよ?」
一応口止めはしてから店を出た。