第4章 〜華奢〜
「そう?でも昼言ったことは事実だよ。もう一度ちゃんと向き合ってからおいでよ。そうすれば、何かしら考えてあげる」
「…向き合え、か…。なぁ、俺隊長と副隊長兼任してて、精霊通信の編集までやってんだけど。どうやったらそんな時間出来ると思う?」
酒を飲みながら愚痴交じりに呟いた檜佐木に少し同情する。
確かに、現在、隊長の抜けた三番隊、五番隊、九番隊は、副隊長が隊長職務まで兼任している。
九番隊はそれに加えて編集部もあるから、手が回らないのは目に見える。
今日だって恐らく乱菊に強く言われて断れなかったのだろう。
「仕方ないなぁ…」
半ば自棄になっている檜佐木が憐れで、私は小さくため息を吐いた。
掌に光を集めると、それは無数の玉の形を作り、後から作られた瓶に収められる。
「餞別。寝る前に飲んでみなさい」
「…なんだよ、これ?」
不思議そうに首を傾げる彼にその効果は教えない。
「飲めば分かるよ」
「…わかったよ」
怪訝そうな視線のまま、小瓶を懐に仕舞う檜佐木。
そこへ乱菊がグラスを持って戻ってきた。
「玲?これ飲んでみなさい」
受け取ったグラスの中身は、淡い桃色で。
口元に持って来ても、さっきの様な酒気は感じない。
こくりと一口飲むと、ふわりと甘い香りとともに、程よい酸味が口に広がった。
「わぁ、これ美味しい。ありがと、乱菊」
「良いのよ。今日はたくさん飲みましょ」
嬉しそうに笑う乱菊に何処と無く別の意図を感じたけれど、邪気では無さそうなので笑い返しておいた。