第3章 記録にしないで(ラビ夢)
「オレはお前に死んでほしくないさ。」
「そう簡単に死なないから大丈夫よ。」
シュリは手鏡を取り出すと、口元に弧を描いた。
「よし、オッケー。明るくて接しやすい、黒の教団のエクソシストのシュリ。完成。仲間想いって設定も付け加えとくか。」
「シュリっていつもそうやってキャラ作りしてるよな。」
「その方が楽なんだもん。本当の私なんて見せる必要無いでしょ?」
シュリが本当の自分を見せるのは、オレとじじいの前だけ。
本当のシュリは歴史を記録することだけを楽しみ、人の死や争いを何とも思わない冷酷な人間だ。
「オレ、たまにお前が怖いさ…。」
「酷いなぁ。私だって一応血の通った人間だよ?」
「なんつーか…もしオレが死んだらどうする?」
その質問にシュリは目を丸くした。
「どうするって…どうもしないんじゃない?まぁその時になってみないとわからないよ。」
「そっか。」
じじいは黒の教団のお偉いさんと話に行き、今はシュリと部屋に二人だ。
オレはシュリの隣に座り、その細い肩を抱き寄せた。